セルフコンパッションには弱さが必要

2023年01月26日


... unconditional quality of love ... Your imperfections are part of this experience of love.
◆◆◆◆あなたの諸々の弱さは無条件の愛を経験するのに必須の要素です。(訳/早坂)
クリステン・ネフが2000年代に入って間もなく提唱した概念「セルフコンパッション」、これを高める介入は、従来の「自己効力感」や「自己肯定感」を高める介入よりも介入効果が期待できるものであることが分かってきており、わたしもある程度は注目していました。
しかしながら、上に紹介したK. D. StrosahlとP. J. Robinsonの鬱の自助本[1]の一節は、さらに衝撃的で、わたし自身にも強い解放の体験をもたらしました。


[1] Kirk D. Strosahl, & Patrica J. Rovinson, The Mindfulness & Acceptance Workbook for Depression, Second Ed. Using Acceptance & Commitment Therapy to Movw Through Depression & Create a Life Worth Living, New Harbinger Publications. 【翻訳】カーク・D・ストローサル/著、パトリシア・J・ロビンソン /著、種市 摂子/訳『うつのためのマインドフルネス&アクセプタンス・ワークブック:ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)でうつを抜け出し活き活きとした人生を送るために』(星和書店)

カウンセラーであっても普通の人間ですから、日々嫌なことを経験し、自分の弱さ、不甲斐なさに重い気持ちを抱えている上に、クライアントの悩みに自分の心を添わせる訳ですから、心理的負荷は相当のものです。

こうした苦痛の体験は、以前のわたしなら、更に勉強する方向に駆り立てる原動力となっていました。問題解決に一歩でも前進する方が、落ち込んで気晴らし憂さ晴らしに逃げ込むよりも、短期間で気分を改善することができるからです。

ところが日々の生活ではこうした対応がいつもできるとは限りません。そんなときはやはり凹んだままでいるより仕方ありません。

ここで出会ったのがこの言葉でした。

... unconditional quality of love .... Your imperfections are part of this experience of love.

あなたの諸々の弱さは無条件の愛を経験するのに必須の要素です。(訳/早坂)

これはセルフコンパッション・エクササイズの一節で、これを日常の中で思い出すだけで、苦しさそのものに変わりはないけれども、だからこそ大きな愛に包まれ補われているのだ、という不思議な解放感が沸き上がってきました。

以下にこの瞑想エクササイズの全文を掲載します。(翻訳はすべて早坂の責任に帰するもので、意訳した部分や変更した部分があります。)


セルフコンパッションの瞑想

それでは、心地よく座りながら、目を閉じ、二・三回深呼吸をして新鮮な外気を吸い込み、よごれた吸気を吐き出しましょう。深く長く呼吸し、一つ一つの呼吸を大切に行います。心を空っぽにし、集中して、自分が真実に愛されている場面を想像してみましょう。そこに身を置いてください。この体験を自分の中に造り出すとき、どんな感情も、思考も、記憶も、あるいは身体感覚も出し惜しみすることなく、完全に愛されている様子を想像してください。だっこされている様子を思い出すかもしれません。あるいは優しく触れてもらっているかもしれません。そうしてくれている人は小さいころのあなたにとてもやさしくしてくれた人です。ひょっとしたら、思い出すのは、あなたの伴侶と共にいるときかもしれません。その人の腕を感じながら、美しい夕焼けを見ているかもしれません。もしかしたら誰かにハグされているのを思い出すかもしれません。久しぶりにあった人が、あなたにあえてとても喜んでいる情景かもしれません。心の中に湧き上がる温かい感じ、その愛があなたの上に注がれるに身を任せてください。

これらの感覚を今現在にとどめておくように努力してください。この愛の感覚の無条件の性質に気づきましょう。これは自分で獲得するものではありません。これはひたすら制限なく与えられるものです。あなたの諸々の弱さは無条件の愛を経験するのに必須の要素です。そこで、やってみてほしいことがあります。自分自身でこの愛のシャワーを与えることができますか。誰かほかの人が与えてくれたのと同じ無条件の愛を、自分自身で与えてみてください。ちょっとUターンして、このポジティブなエネルギーを自分で自分に向けることをやってみてください。自分を愛する体験は、色々な形ですることができます。これを感覚的なものに例えてみる、たとえば色に例えてみることもできるでしょう。どんなものでも内的な体験が立ち現れたら、それをそのままにしておきましょう。そしてその感覚を愛のエネルギーと共におらせるのです。もし疑いの瞬間が現れ、そこに飛び込みたくなったら、その疑いもなくそうとせず、そのまま愛のシャワーを浴びせかけてください。あなたに向かってやってくるものはどんなものでも完璧なのです。ただそれらに愛を注ぎかけるだけでよいのです。